■牡蠣は「冬の食べ物」という誤解。
日本には大きく分けて2種類の牡蠣があります。それは「真牡蠣」と「岩牡蠣」。この違いをうっすらでも認識するまでに、岩カキコ自身もだいぶカキ好き度が進行する工程を経ています。
画像:真牡蠣と岩牡蠣
最初は「牡蠣は冬が旬のはずなのに、夏に食べる牡蠣の方が美味しく感じるんだよなあ~」くらいの気持ちでした。
まだ何となく牡蠣が好きっぽい、レベルの段階の人にはこの2つの牡蠣の違いについて知るタイミングが自然と訪れることはこれまでの時代はあまりなく、「牡蠣は冬」と思って暮らし続けることになるのだろうと思います。
第一、「牡蠣」は日本では冬の季語でもあります。
しかし、カキ運がいい人や、地理的に岩牡蠣の産地に近い方であれば、こうしたありがちな誤解と偏見(?)を受けることを人生の序盤から回避することが出来るのでしょうから、とても恵まれたことです。
結論から言うと、少なくとも我が国日本では、牡蠣は全国どこでも通年楽しめる食材です。
そして、それを実現した立役者は何と言っても1988年7月のクロネコヤマトのクール宅急便サービスのスタートなのであります!感謝を込めて記事を作成しましたのでご興味がある方はどうぞ。
やっぱりこんな時代に生まれてよかった!
■国産カキの二大品種・真牡蠣と岩牡蠣について(概要)
さて、同じイタボガキ科の牡蠣の中でも、日本で冬の季語ともなっている、冬が旬の牡蠣、それが世界的にも流通している「海のミルク」こと「真牡蠣」です。
画像:真牡蠣
一方、真逆のシーズンである夏に旬を迎える牡蠣、それが「海のチーズ」こと「岩牡蠣」なのであります。
画像:岩牡蠣
普通は岩牡蠣の方が大粒であることが多く、殻の内側もグッと深さがあることが多いような気がいたします。
両者の違いを意識していない牡蠣好きさんで、夏に食べたカキが美味しかったなあ~と思っていらっしゃる方は、かつてのカキコと同じで、食べている牡蠣は一般的な冬の「真牡蠣」ではなく、もしかしたら「岩牡蠣」かもしれません。
夏は暑いから、冷たい生牡蠣が余計に美味しいのであります!
旬の季節の違いとその味のたとえだけでも、両者かなりの差があることが分かりますが、今回は牡蠣初心者(でも先日ジュニアオイスターマイスターになれちゃった)岩カキコが牡蠣愛を込めて、二つの牡蠣の違いについて迫ります。
愛するものを知りたいと思う気持ちこそが「愛」なのであります!!!
■冬のかき>真牡蠣(マガキ)のというカキについて
まずは日本でも世界でも最もポップな「真牡蠣」というカキについて調べていきたいと思います。世界的に一番流通している真牡蠣は養殖が最も多い牡蠣でもあります。
別名:太平洋牡蠣、日本牡蠣、長牡蠣など
学名:Crassostrea gigas
同一種にエゾガキ、ナガガキ、フランス産の緑牡蠣がある
原産地:太平洋アジア沿岸部(朝鮮・樺太・中国)日本ではおおよそ太平洋側
生息地:汽水域、潮線上にも生息、比較的大きな礁を形成
旬:冬場(10月~4月が水揚げ時)
養殖期間:1年~3年(地域による)
真牡蠣の旬は季語通りの冬場。でも調べてみると、水揚げの時期は10月~4月という事で、秋冬とギリ春先までという意外と長いシーズンに旬という事になります。
この旬の定義としては、真牡蠣は産卵時期の数か月に一気に大量産卵し、産卵後は体内の栄養素を使い切って身が細くなってしまう事から産卵前までという事になっているようです。
また、日本各地のブランド牡蠣を調べている際にも気づいたことでしたが、真牡蠣は海に川が流れ込んでいるような汽水域で養殖されていることが多いようです。近隣の森や川自体の栄養もたくさん注ぎ込むエリアで美味しい牡蠣は育ちます。
■人生いろいろ真牡蠣もいろいろ
地域固有のブランド牡蠣の名称ではなく、牡蠣にもいろいろな呼び名があるようです。
■ヴァージンオイスター
まだ1度も産卵をしていない1年目の牡蠣のことをヴァージンオイスターと呼ぶそうです。
■がらす(水がき)
また、気仙沼の唐桑半島ではこのようなスッカラカンの産卵後の牡蠣のことを「がらす」と呼ぶのだそうです。透明な身が本当にその名の通り、ガラスのようです。一般的なこのような状態の牡蠣は「水がき」と呼ばれています。
画像:今井さんブログ
貴重な産卵後の牡蠣の中身がどうなっているのか?という事が気仙沼の料理長・今井さんのブログにありましたのでご紹介させていただきます。
今井さんのブログ情報によるとたった2日間で真牡蠣は産卵を終え、パンパンに詰まっていた中身がこんなにスッカラカンになったというお話でした。。。
やはりどんな生物も産卵は命がけ、という事を感じさせる衝撃的な内容です。
■三倍体牡蠣
やや大型で、夏でも生殖機能が発達しないために(身がやせることがないので)通年出荷を可能とした真牡蠣には「3倍体牡蠣」というゴツイ呼び名が付いています。広島県立水産海洋技術センターがバイオテクノロジー技術を応用して開発した品種であるそうです。
三倍体牡蠣は特に不十分な身入りが懸念される夏やシーズン初めであっても大粒で安定したクオリティの牡蠣を出荷できるメリットがあります。それは生産者側にとっても大きなメリットと言えます。
主に北海道、岩手県、宮城県、兵庫県、岡山県、広島県産などで養殖されていましたが、現在ではそのほかの地域でも三倍体牡蠣の養殖を強化している養殖場が増えているようです。
理由としては、前述の消費者側、生産者側双方に生まれるメリットに加え、真牡蠣の大量死に対する防衛策としても機能していました。
三倍体牡蠣の場合は前述のような理由で身がやせている時期がないために、牡蠣自身が生命を守るためのエネルギーを身に蓄えていることから、通常の真牡蠣が身がやせている時期に疫病に襲われたり、プランクトン不足に遭った場合に比較しても、被害が3割程度と小さくて済むというメリットもあるようです。
■日本の真牡蠣が世界に渡っている
現在では養殖用に持ち出されたことから、ヨーロッパ諸国、南北アメリカ、オーストラリア、アフリカでも生産されています。
基本的に真牡蠣は全世界で食べられている食材です。香港の高級ホテルのレストランでは必ずステータスとして生牡蠣が提供されることになっているのだとか。
■フランスで現在流通しているカキの9割は日本の真牡蠣の子孫
特に牡蠣を愛する国であるフランスでは事情があって、約90%が日本のマガキの子孫なのだそうです。
牡蠣好き国家フランスと日本のお話はコチラ↓
■夏のかき>岩牡蠣(イワガキ)のというカキについて
次に岩カキコの大好物である岩牡蠣です。岩牡蠣は真牡蠣とは異なり夏に旬を迎える牡蠣で、茶色の大型の殻形成することが多く、大きいものだと1キロを超える巨大サイズになります。可食部ももちろん大きく、
画像:イワガキ
岩牡蠣という日本の宝石を今後、お金持ち外国人に奪われてしまうんじゃないかとハラハラしていた岩カキコでしたが、
調べてみると、どうも日本人以外の外国人は小ぶりの牡蠣の方がむしろ好きらしく、殻についてもゴツゴツして形がいびつなものよりも、並べた大量の牡蠣の身の均一性や殻のきれいさを重視する傾向にあるようなので、
岩牡蠣は狙われなさそう!
と胸を撫でおろしていますww
別名:夏ガキ、クツガキ、シャッパ、ソコカキ、ソコガキ、バッカイ
学名:Crassostrea nippona/Rock-oyster
原産地:日本ではおおよそ青森の陸奥湾~九州の日本海側。
生息地:潮間帯下の岩礁域に生息。潮線下から水深20mまでに生息。大きな礁は作らない。
旬:夏(3月下旬~9月が水揚げ時)※採れる時期ならいつでも旬
養殖期間:天然物(4-5年)と養殖物(3年以上)があるが、養殖の方が成長が早い。
岩牡蠣は真牡蠣と違って産卵期が長いことから、急激に味が落ちるようなことがないため、採れる夏の時期は常に旬です。しかし、真牡蠣に比べて成長が遅いので、最低でも2年は育てることから真牡蠣のような「ヴァージンオイスター」という概念はなさそうです。1年目だと真牡蠣より小さいそう。
■岩牡蠣の養殖の発祥の地は島根県西ノ島
日本で最初に岩牡蠣の人工種苗による養殖に成功したのは島根県の西ノ島町で、1992年(平成4年)のことだそうなのでまだビックリするくらい最近のことでした!
画像:西ノ島の岩牡蠣養殖
養殖に成功した時はそりゃあ嬉しかったよ。(岩牡蠣の)ちょうつがいの緑色の部分が、まるでエメラルドのように綺麗に見えたくらい
養殖が成功する前までの岩牡蠣は当たり前ですが天然ものしかなく、とても高価な高級品だったのだそうです。それが東京に住む岩カキコのような一般庶民でも手の届く価格帯で食べられるようになった現代は本当に西ノ島町でいわがき養殖を営む方々や、クロネコヤマトのおかげだと毎回つくづく思います。
本当に本当に大感謝です。
島根県では東京でもとても人気のブランド岩牡蠣「春香」の生産地でもあります
■真牡蠣と岩牡蠣まとめ
個人的には口いっぱいにミルキーな美味しさとコクの広がる岩牡蠣の方が好きなことが多いのですが、岩牡蠣でも産地によっては何となく真牡蠣寄りの磯っぽいさっぱりとした塩味の濃いものもこれまで食べた中にはありましたし、
画像:イワガキ
先日初めて食べた五島列島の真牡蠣なんかはメチャクチャミルキーで味は殆ど岩牡蠣レベルの濃さ、岩牡蠣のアベレージをしのぐほどの美味しさでした。
ですから、岩牡蠣か真牡蠣という話も確かにあるでしょうが、やはり産地と自分の舌の相性が肝だと感じます。また、愛情込めて大切につくられた牡蠣や、そのことを分かって取り扱ってらっしゃるお店というのは、食べに行くとすぐに分かるものですし、それは牡蠣の味を構成する最後のピースだなと個人的には思います。
我々も、大切に育てられすくすく育った牡蠣の恵みに感謝しながらいただくことにしましょう。
それではまた♪
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