日本とフランスを結ぶ牡蠣養殖の絆の歴史!カキ愛は国境を越える

牡蠣マメ知識

■日本人と同じくらい生牡蠣大好きな国民フランス人。

世界で一番牡蠣を養殖している国はちょっと意外なことにフランスです。それも欧州で生産されるカキの75%をつくっているのだという事ですから、フランス人がどれだけ牡蠣好きかが分かります。市場規模4億5000万ユーロ(約590億円)という巨大なマーケットとなっています。

世界で最も牡蠣の産出量の多い国は日本という文献とoyster Crassostrea plicatulaといわれる種類の生産量が近年飛躍的に増大した中国であるという話があるようで、今後調べる必要がありそうです。また、韓国やタイでの生産も近年急増していることが分かっています。

 

■フランス人の真牡蠣好き&カキ愛の歴史文化がスゴい。

ヨーロッパにおける牡蠣養殖の歴史は長く、古代ローマ時代には始まっていたと言われています。2500年以上の歴史を持っていることになります。

 

 

そしてその時代からフランス人は魚を生で食べることはないにもかかわらず、こと牡蠣に関してだけは昔から「生」で、かつ心臓が動いているような「活きづくり」で食べることにメチャクチャこだわっているのだそうです。

 

生きていることにこだわるあまり、お客さんに出すときも下の貝柱は切らず(剥がさず)に提供され、お客さん自らが剥がして食べるくらい「生きている」ことにこだわってます。

引用元:kakipedia

 

その為、下の貝柱を剥がすためのナイフが付いている「牡蠣用フォーク」というものがフランスには普及しています。

 


画像:牡蠣用フォーク

 

なんかめちゃめちゃオシャレ!

 

このフォークですが、最近はやった感じではなくて、印象派の巨匠エドゥアール・マネさんの絵画の中にも登場するので、結構昔から「オシャレ」だのなんだのではなくて実用的な道具として一般に普及していたようです。

 


画像:マネの絵画「かき」の中に出て来る牡蠣フォーク

 

ここまで見ると、牡蠣文化レベルはフランスの方がずっと高そうなイメージもしてきます。

 

一方、日本にあるのは、もうそろそろ廃版になりそうな、団塊ジュニアあたりまでがギリ知っている、イチゴを潰すスプーンとグレープフルーツ用スプーンですw

 


画像:twitter

 

きっと将来
博物館に飾られるのでしょう。

 

昔はイチゴは潰して砂糖をかけて牛乳をかける果物でしたw

 

でもまあ、日本には日本ならではの牡蠣文化もあったようなので、それはおいおい改めて調べてみたいと思いますw

 

 

■生魚を食べないフランス人が、なぜ牡蠣の生食、活きづくりにこだわるのか?(カキコの分析)

近年はまた変わったのかもしれませんが、かつては生魚を食べる日本人を変人のような眼差しで見ていた欧米人たちですけれども、生魚は食べないのに牡蠣は生食にこだわるというフランス人もちょっと変わっているように思えます。

 

何故、牡蠣は生食で
しかも活きづくり??

 

何となくのカキコの想像ですが、先日調べた内容だと真牡蠣の生命力はすさまじく、体内にグリコーゲンという糖をたくさん含んでいることから(「牡蠣と栄養」参照)、1週間ほど海水に漬かることが出来なくても、必死で殻の口を閉じてエネルギーを温存し、生き続けることが出来るそうなのですよ。

 

 

クール宅急便もない古代ローマ時代に、海岸でとれた牡蠣を一定の日数をかけて常温で消費者のいる地域まで足で運んでですね、人の口に入るまでの工程で、ナマモノに対する時間としては、結構な時間がかかったことを考えると、

安全性の確保のためにも「生きていること」を確認して食べられる「活きづくり」が主流となったのではないか?というのがカキコの分析です。

 

魚で同じことをやってしまうと、採って数十分もすれば魚は完全に死んでしまっていますから輸送の段階でかなり傷む、場合によっては腐る。なので、当時、生で食べられる海産物というのは、生命力が強くて、生きて届く真牡蠣くらいだったのではないかと思うのです。

 

 

そんなフランスでも、現在は生食以外に牡蠣に関するメニューがこれでもか!という300種類以上もあるそうです。それだけフランス人には牡蠣メニュー出しときゃレストランも「スベラナイ」という事なのでしょう。

 

フランス人のロマンは
牡蠣で出来ているのかもしれない(笑)

 

■三食牡蠣のナポレオン・ボナパルトがイギリス征服に及んだのも理由はカキ。

とても有名な話ですが、ナポレオンさんは状況が許す限り、三食「牡蠣」を食べていたと言われており、フランス沿岸の天然牡蠣は(ナポレオンさんによってかどうかは知りませんが)食べ尽くされて無くなってしまったのでイギリスの牡蠣狙いで征服意思を固めたと言われています。

 

写真を見ると確かに見事な「カキっ腹」をされています。

 


画像:ナポレオン

 

でもそれはナポレオンさんの牡蠣好きを面白おかしく伝えた内容で、本当は軍事的な意味だったともいわれています。いつでも海岸へ行けば食べられる栄養満点の牡蠣さえ確保できれば、兵は空腹を逃れ、戦争にとても有利になるという判断だったのかもしれません。

 

我が家では「ナポレオン」というトランプゲームが正月の恒例行事でした。とても面白いのでこちらも是非に。

 

 

■フランスの巨匠エドゥアール・マネが表現した牡蠣のエロス

先ほども牡蠣フォークのくだりで少し登場しました、日本でも人気の印象派巨匠、エドゥアール・マネさんですが、彼もまた牡蠣をこよなく愛したフランス人の1人です。

 


画像:エドゥアール・マネ

 

結構ビビットな男性。

 

なんと、生牡蠣をモチーフにした非常に官能的な(カキコの主観)名画を残しています。

 


画像:エドゥアール・マネ「かき」(1862)

 

詳しくはこちらをどうぞ↓↓

牡蠣の味覚を堪能したマネが描くかきの官能的名画を名言と共に眺める
印象派の巨匠として日本でも人気のエドゥアール・マネが描いた牡蠣の名画があります。当時大きな批判と酷評を浴び続けたにもかかわらず、その後時代を代表する画家として名を残したエドゥアール・マネのその感性の源にどうやらカキの官能的な味わいも貢献していたようです。

 

フランス人の牡蠣愛は
かなり熱狂的だった!(爆)

 

■牡蠣を愛するフランスに1963年に襲った悲劇のカキ大量死。80%のかきが絶滅しかける被害へ

ここまでフランスの方々がどれだけ牡蠣が好きなのか?という事をお話してきたのですけれども、そんなカキ愛の深いフランスを1963年、牡蠣の大被害が襲い掛かります。

 


画像:ブルターニュ地方のカキ養殖

 

牡蠣好きの私からしても
想像するだけで絶望感漂う話であります。

 

ブルターニュ地方を大寒波が襲い、水面が氷河のように凍った状態になった後、その後まもなくして牡蠣に疫病(牡蠣ヘルペス)が大流行。ナント80%もの牡蠣が絶滅しかけ、フランスの牡蠣はかつてない危機に瀕しました。

 

その当時、フランスで出回っていた牡蠣のほぼ100%が「ヨーロッパヒラガキ (ブロン/フラット/フランス牡蠣)」でした。

 

 

牡蠣大量死滅の被害は主に大西洋沿岸及び地中海の在来種であるヨーロッパヒラガキポルトガルガキなどの品種に対して起こりました。

 

 

■日本がフランスの牡蠣絶滅危機を救う!宮城県の真牡蠣種を提供へ

この被害の状況を知った松島湾浦戸種牡蠣漁業協同組合は3年後の1966年、種ガキ20函(※)を空輸し、翌1967年には今度は80函(※)が追加で輸送されました。

※1函の中の種苗数は約15000個

 

日本のマガキ種はフランスにとっては外来種ではありましたが、世界中の牡蠣の中でも非常に生命力が強く、病気にも耐性が見られたため、導入されたようです。

 

現地の養殖試験の結果として、日本のマガキ種の中でも、特に宮城県の真牡蠣種が最も突然死の数が少なく、成長もとても良好であったことから、結果として宮城の真牡蠣がフランスの牡蠣の再生に一役買う事となりました。

 


画像:牡蠣種(気仙沼唐桑半島の今井さんのブログ)

 

今日ではフランスに流通している牡蠣のおよそ90%が宮城産の牡蠣の子孫となっているそうです。

 

90%って(笑)

 

「日本が助けてくれなければ、今のフランスの牡蠣はなかった」というフランス人も多いそうです。

 

そして、この話はここで終わりませんでした。

 

 

■東日本大震災で壊滅的となった宮城県のカキ養殖現場にフランスからの支援が届く!

今度は2011年3月、宮城県を東日本大震災が襲います。地震と津波の影響もあって、宮城県のカキ養殖の現場にも甚大な被害が及びました。

 

船も牡蠣床も全て、養殖施設全体が地震と津波の被害で壊滅的な状況だった時に、資援を申し出てくれたのはほかでもないフランス人でした。かつて宮城県から支援を受けたブルターニュ地方の牡蠣業者も協力を申し出てくださったそうです。

 

ブルターニュからの牡蠣も日本に入ったという事で、日本の牡蠣がフランスのブルターニュ地方へ渡り、45年もの歳月を経て戻ってきたという事にもなります。

 

かつてフランスの牡蠣絶滅の危機を救ってくれた宮城のカキ養殖場への恩返しとして、フランスの様々な団体から支援金や養殖業再開のための物資支援等が贈られました。

 


画像:2011年7月 「France-Okaeshi(フランスお返し)プロジェクト」

 

フランスお返しプロジェクトについては「KAKIPEDIA」さんのサイト内でとても詳しくご紹介されていました。牡蠣好き日本人であれば知っておくべきお話がたくさん書かれていますので、是非読んでみてください。

 

牡蠣が結んだフランスと日本の絆が、危機を救い、国民に喜ばれる牡蠣の養殖の再開を助けたのでした。

 

 

■牡蠣が結んだ絆でカキのための海を守るべき時代がやってきた

ここで話は終わりたいところではあるのですけれども、実は牡蠣の大量死の疫病は近年その勢いを大きくしてきています。

 

フランスではカキ養殖場で定期的に牡蠣の大量死が発生している状況が絶えず、近年その原因が1963年の牡蠣大量死の原因とされた牡蠣ヘルペスウィルス1型(OsHV-1)だけが原因ではなく、ウィルスによって弱体化されたカキの内部に細菌が追い打ちをかけて襲っていたという研究結果が発表されています。そのヘルペスウィルスも変異を続けているようです。

 

前述のようにフランスの牡蠣は現在その90%が日本産の真牡蠣の子孫です。もしウィルスが日本の牡蠣に感染すれば、日本中で同じような絶滅危機に瀕する養殖場が次々に出て来るというリスクが差し迫っているとも言えます。

 

 

この原因は地球温暖化とも海洋汚染とも気候変動による海水温の上昇とも言われており、つまり、美味しくて安全な牡蠣を守るには世界が一致団結して牡蠣が健やかに生きられる環境の保全に努める必要がありそうです。

 

カキ愛が国境を越え、
世界をひとつに結ぶ日も近いことをカキコは祈ります。

 

今は完全に無力なカキコですが、いずれ祈ってるだけでなく何らかの形で命の恩人である牡蠣にできることを思いつけばいいなと思ってもいます。そのスタートとしてもまずはこの「牡蠣サイト」の充実に励んでまいりたい所存です。

 

ではまたお会いしましょう♪

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